さよならソングは涙色 12
今もまだ好きだよ 好きなんだ 君が、好き
君が隣にいない事が こんなにも切ないなら
二人出逢わなければ 何度も思っては俯いて
いつだって目を閉じ浮かぶのは 君の笑顔と優しい手のひら
“前を向かなきゃ” わかっているけど
やっぱり君といたあの日々は消したくない 忘れられなくて
矛盾した想いに足をとられ 今もまだコノ場所から動けない
誰も居ない隣 今ではもう当たり前の毎日で
君の面影を思い出すたび 高鳴る鼓動
優しい口付け 初めて重なったあの日
目が合った瞬間 照れたようにお互い笑ったね
そんな儚い想い出 背負っているのは僕だけなのかな
君はもう新しい道を歩んで 僕じゃない誰かの隣で笑っているの?
嫌だよ いやだ
君のために流す涙 枯れ果てその意味も忘れた
名前も何も知らなかったあの頃
何も知らずに笑えたあの頃
戻れたのなら どれほど幸せなんだろう
叶わない願い 何度願ったって君はもうここに居ない
たとえ君が僕のモノでなくったって 僕はまだ…
「君が好き、って言えたらいいのに。」
ヘッドフォンを外し、車窓に映る街並みに目を細める。
いつの間にか暖かくなっている日差しが私を照らした。
「はあ、何でこんなに気分が滅入ってるの?」
わからない。
何故か気分が乗らない。
「今日はもう寝よ。」
布団にダイブして目を閉じる。
時刻はもう夜中の一時前だった。
「!、電話…、」
毎回慣れない、急に鳴る携帯の着信音。
ビクッとして携帯を握り締めると、やっぱり予想通りの彼の名前。
いつしか、そこに疑問は浮かばなくなってきていることに苦笑い。
「……………。」
今日、新しくできたお友達の朱音ちゃんから言われた言葉が頭を過ぎる。
自然と通話ボタンを押しかけていた親指が止まった。
(…っ切れろっ。)
ぎゅっと握り締めた携帯に念を飛ばして静まり返るのを待つ。
その数秒後、携帯はピタリと音を鳴らすのを止めた。
同時に、ちょっとだけ罪悪感が胸を支配する。
「……何か、話せる気がしない。」
胸がざわざわしていて落ち着かない。
着信が切れて安心しているはずなのに、何でか落ち着かない。
すると、携帯が再び鳴り始める。
だけど画面を見れば、今度は新着メールだった。
「バカ、電話出ろぃ……無理。」
ごめんね。
何度も心の中で謝ってみるけど、今日はまともに話せそうにないから返事も送らない。
このまま寝てやる。 寝るんだ私。
「メールしろって言われたのにな、昨日。」
約束破っちゃった…。
メールを送らなかったりメールをブチッたり電話無視ったり、そんなの今まで何度だってあった事なのに。
その時は何も思わなかった。 鬱陶しいな、くらいにしか。 それこそ罪悪感なんて、程遠い感情だった。
なのに、どうして今はこんなにも心苦しいんだろう。 相手が丸井ブン太だからなのだろうか。
「あーもうっ調子狂う!!」
私、どうしたんだろう。
何か変だ。 変だよ、変。
苦しいんだ、すごく。 胸が、ずっと突っかかった感じがして気持ち悪い。
気になるんだ。 今彼が何しているのか。
ホントはすごく声が聞きたいのに。
私から電話を掛けて、彼から返ってくる反応を知るのが、怖い。
(今何してんだろ、アイツ。)
何を想って、何を見て、何を聞いて、何を感じているんだろう。
電話出なかったこと、メールしなかったこと、怒ってるのかな。 文句垂れてるのかなあ。
(それとも、彼女と一緒にいるのかな。)
浮かんできた可能性に、また胸がきゅうっと苦しくなって。
それでも自分の気持ちを認めようとはまだしなかった。
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2009.02.12 執筆 サンキュウ・クラップ!
(プライドだけは誰よりも高かったから。)