さよならソングは涙色 07
今もまだ好きだよ 好きなんだ 君が、好き
君が隣にいない事が こんなにも切ないなら
二人出逢わなければ 何度も思っては俯いて
いつだって目を閉じ浮かぶのは 君の笑顔と優しい手のひら
“前を向かなきゃ” わかっているけど
やっぱり君といたあの日々は消したくない 忘れられなくて
矛盾した想いに足をとられ 今もまだコノ場所から動けない
誰も居ない隣 今ではもう当たり前の毎日で
君の面影を思い出すたび 高鳴る鼓動
優しい口付け 初めて重なったあの日
目が合った瞬間 照れたようにお互い笑ったね
そんな儚い想い出 背負っているのは僕だけなのかな
君はもう新しい道を歩んで 僕じゃない誰かの隣で笑っているの?
嫌だよ いやだ
君のために流す涙 枯れ果てその意味も忘れた
名前も何も知らなかったあの頃
何も知らずに笑えたあの頃
戻れたのなら どれほど幸せなんだろう
叶わない願い 何度願ったって君はもうここに居ない
たとえ君が僕のモノでなくったって 僕はまだ…
「君が好き、でいいのかな。」
揺れ動く瞳。
溢れてくる想いをこの歌に乗せて。
「んー、明日のデート、面倒くさい。」
携帯を閉じる。
呆れた表情をした、杏璃と目が合った。
「いい加減にしなさい。 何回ドタキャンしたのよ。」
「今度したら四回目。」
「何て言うか…相手もすごいネバるわね。」
「ね、すごいよね。」
「アンタが言うな。」
ぱちこん。
叩かれて「いたっ」と声を上げた。
杏璃は謝ることなく当然だって顔をして私を見下した。
「結局断るんだったら初めから約束しなきゃいいじゃん。 ていうかその気ないんだったらさっさと縁切っちゃいなさいよ。
いつまでも思わせぶりな態度とってたら相手が可哀想でしょ。」
「それはそれで…寂しいじゃん。」
「意味わかんない上にアンタ何様?」
「サマ。 とにかく常に誰かに構っててほしいけど…面倒くさい。」
「はあ、それは本気で好きじゃないからでしょ。」
「私だって本気で人を好きになりたいよ…。 でもどうやったらなれるかわかんない。」
本当で人を好きになるって、どういうことなのか。
とりあえず最初は軽いノリで遊んで、告られれば付き合って、嘘なんて平気で付いて、デートを断る事も当たり前。
メールが着ても気分じゃなければブチるし、電話だって出ない時もしばしば。
相手が愛想尽かして別れが来ても「んじゃバイバイ」で終わらせてきた日々。
寂しいって気持ちは、あった。 だけど悲しい、なんて気持ちは湧いてこない。
まあ、でも一度だけ、また違った感情を抱いた時もあった気がする。
それが、本当の恋だったのか。 今でもわかんない。
「ほら、あれは? 高校の時の、誰だっけ?」
「…誰?」
「私が聞いてんの。 何かいたんでしょ。 が忘れられない人。」
ちょうどソイツのことを考えていただけに、びっくりした。
忘れられない人っていうか、腑に落ちない終わり方をした人、だよ。
「ウザイくらい好きだって言って寄って来て、何しても離れなかったくせに…何かを境に急にアッサリ離れて行ったからね。
そりゃ、ビックリしたし、寂しいって思ったし、ソイツが他の人と付き合い出した時は、」
辛かった。
「今までそこまで本気で相手にしてなかったから、私、どうすればいいのかわかんなかったし。」
最後まで見ていることしか、できなかった。
「好きだったの?」
「どうなんだろうね。 懐いてたペットがいなくなった感じ?」
「…そう思ってる時点でアウト。 それって結局が認めようとしないだけなんじゃないの?」
「えー何を?」
「失恋したんだって、こと。」
きょとんとして、目を瞬く。
何、私が、失恋? いつ?
「自覚なし、か。」
私の反応を見て杏璃は溜め息を吐いた。
なーに、嫌な感じ。
「でもやっぱ近いと関係なくなった後、嫌でも目に付くし、だから近い相手との恋愛って嫌なんだよね。」
そう言って頬杖を付いて窓の外を見つめる。
杏璃が小さく「アンタのは恋愛って呼べるのかも謎だけどね」と言ったのを聞き逃しはしなかったけど、
何も突っ込むことはしなかった。
私自身も、そう思うから。
私が今までしてきた恋愛って、ちゃんと恋愛って呼べたのだろうか。
「私以外の人と仲良くしてるところなんて、別に見たくないもん。」
きっとこれは、ただの我が侭。
私は、我が侭。
好きじゃないくせに、自分のモノであってほしい。
これは我が侭から生まれる感情だと、そう思っていた。
杏璃にこの言葉を言われるまでは。
「それは嫉妬だよ、。」
私はただ、いろんな理由をつけて、逃げていただけ。
傷つきたくないから、気づかないようにしていただけ。
「そんなわけないじゃん。」笑ってそう言った私は、ただのバカだった。
_____________________________
2009.02.12 執筆 サンキュウ・クラップ!
(笑って誤魔化さないで、ちゃんと受け止めておけばよかった。)