Warm Corner 101

 

 

 

 

 

、泣きたいお年頃です。

 

 

 

 

 

「どうですか? 部活には慣れてきましたか?」

「うんにゃ、ちっとも。」

「そうですか、それは残念です。 しかしすぐに慣れると思いますよ。 頑張ってください。」

「別に私としては慣れることを望んでないので気にしないで下さい。 それじゃ。」

 

 

 

 

 

片手を上げて颯爽と柳生君のもとを去る私。

一刻も早く食堂へ行きたかったってのが本音だけれども。

昼休み始まって即行、紳士柳生に捕まってしまった私は、

何とかして早く食堂に行けないものかとたぶん始終視線を泳がしていたと思われる。

 

 

マネージャーになって早数日。

全く仕事覚えないわ、丸井君と喧嘩するわ、弦一とバトるわ。

上げだしたらキリがないほど、私はマネージャーに向いてないことが判明。

記憶力だけが取り柄だったのに、それすらも疑わしくなってきた今日この頃です。

 

 

 

 

 

「やったーまだあったよチョコシュー!」

 

 

 

 

 

チョコシューことチョコシュークリームを片手に飛び跳ねんばかりの勢いで食堂を出る。

いやはや、危なかった。

最後の一個だったんだから。

結局この間は仁王君にシュークリーム買って貰うの忘れてたしなー。

 

 

 

 

 

「あー先輩だ。」

「お、そういう君は切原君。 お昼ですか?」

「や、もう食ったんで今からちょこっと打ちに行くんスよ。」

「おーさすがテニスマニア! 頑張って。」

「テニスマニア言わんでくれます? ちょっとした食後の運動ッスよ。」

「どうでもいいけど、食べてすぐだと横っ腹痛くならんの?」

「大丈夫ッス。 食ったの三時間前だし。」

「ちょい待ち。 それって一時間目と二時間目の休み時間ってことですよね。

それっておかしいよね。 昼飯食ってないじゃん大丈夫なの?」

 

 

 

 

 

シュークリーム片手にスキップしてたら靴箱んところで切原君に会った。

切原君は相変わらずお元気そうで。

私は何となく咄嗟にチョコシューを後ろ手に隠す。

きっとこれは本能なんだろう。

 

 

 

 

 

「先輩おいしそうなモン持ってんじゃないっスか。」

「やんないよ。 卑しい子だね。」

「ケチな先輩ッスね。」

「ケチで結構コケコッコー。」

「うっわ、めっちゃムカつくんスけど!! 何スかコケコッコーって!」

「このシュークリームは私の元気の源です! 貴方のような人にはあげれません!」

「いいじゃないっスか一口くらい!」

「一口で満たされるくらいの空腹なら我慢なさい!」

 

 

 

 

 

ブーブーケチーと口を尖らせながら、拗ねてテニスコートへと向かって行く切原君の背中を見送って

私もさっさと教室へ帰って談笑しながらチョコシューを頬張ろうと再び廊下をスキップしだした。

 

 

 

 

 

「廊下をスキップで渡るな。 恥知らずが。」

「ンだよ弦一かー。 びっくりしたなーもー。」

「何をそんなに驚いている。 どうせまたくだらんことでもやっていたんだろう。」

「何を言うか。 つかスキップして何が悪い。」

「馬鹿者! 廊下は歩かんか!」

「テメ一体どこの教師だ。」

 

 

 

 

 

振り返ると眉間に皺を浮かべた弦一がいた。

どっかの先生かと本気で思ったことは内緒。

言ったらきっと説教始まるからね。 言ーわないっ。

 

 

 

 

 

「ふーそれにしても昼休みって無駄に長いなー。」

「そうか。 確かにそうかも知れんな。 十分でも長いというのに。」

「いや、そりゃ短いや。 全部の休み時間を十五分にしてくれりゃ丁度いいのに。」

「何を言っている。 休み時間というのは本来はお手洗いに行くための時間なんだぞ。」

「アホ言え。 何で毎時間トイレに行かにゃらん。 移動教室のための時間だ。」

「む、それもそうだな。」

「やーい弦一のヌケサクー。」

「たわけ! すぐそうやって人をからかったりするな見っとも無い!」

 

 

 

 

 

ゴスッと鈍い音がして脳天にやばいくらいの衝撃がした。

テメ、女に手を出すたぁどういうことだ。

武士道に反してるんじゃないのかコノヤロウ。

 

 

 

 

 

「そういえば言い忘れてたが、来週から朝練は絶対参加になるから遅刻するんじゃないぞ。」

「なにー!? 自主参加じゃなかったの!?」

「もともとは自主制ではなかったんだ。 幸村もああなってしまったしマネージャーも辞めてしまったからな。

落ち着くまでの暫くの間だけ朝練を辞めにしとったんだ。」

「ずっと辞めてりゃいいのに。」

 

 

 

 

 

くそっ仕事増やしやがって。

明日なんてせっかくの休日が高校生との合同練習とかいうのがあって休日だと言うのに狩り出される。

日曜も練習試合があるそうで。

……一週間休み無し!?

そりゃないよ!

うわキッツー!

 

 

 

 

 

「ちなみに朝練は7時集合だ。」

「鬼ー!! 悪魔ー!!」

 

 

 

 

 

怒りのあまりつい握り潰したチョコシューからチョコが飛び出て弦一の制服についた。

こうして私の優雅な昼休みは弦一の制服のシミを取ることで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

2007.02.12 執筆

弦一郎の喋り方がいまいちわからん。