Warm Corner 101

 

 

 

 

 

、食べたいお年頃です。

 

 

 

 

 

「ふー、やっぱ高校生って強ぇーなー!」

「よく言うよ。 勝ったくせに。」

「まあ当然だろい。 なージャッカル!」

「……ほとんど動いてたの俺じゃねえか。」

 

 

 

 

 

土曜日、無事高校生との合同練習も終わり、私達は腹ごしらえにファミレスに寄ることになった。

本当はお財布と相談してファーストフードにしようって言ってたんだけど、

予想通りあの頑固親父が渋ったことにより、百歩譲ってファミレスになった。

まあ丸井君も品揃えからしたらファミレスでよかったらしいけど。

 

 

 

 

 

「俺デラックスプリンパフェ! と、白玉ぜんざい!」

「俺は焼肉丼とチョコバナナパフェ!」

「俺コーヒーだけでいいわ。」

「相変わらず丸井君と切原君はよく食べますね。 では、私もコーヒーだけにいたしましょうか。」

「俺これ食ってみたい。 宇治とチョコのレインボーサンド。」

「そりゃまたカオスで奇妙な物をお頼みになるのですね仁王氏は。 私フルーツサンドとスイートポテトパフェ!」

、少し控えんか。 お前は確か帰ってすぐ夕飯だろう。」

「大丈夫だよ、それも食べるもん。」

「ほう、は丸井と同じタイプか。 俺は宇治茶をいただこう。 弦一郎、お前は何にするんだ?」

「そうだな、俺もコーヒーだけでいい。」

 

 

 

 

 

注文を受けていたウェイトレスさんは何故か苦笑いを浮かべつつ奥へと消えて行った。

きっとあれだな。

奇妙な集団だとか思ったんだろうな。

ゴツい男七人とか弱き乙女一人。

うーんファミレスに来るにしてはわけわからん組み合わせだ。

しかも一人保護者っぽい奴いるしな。

 

 

 

 

 

「にしても副部長が帰りに俺達とどこか行くって珍しいっスね。 全国大会以来じゃないっスか?」

「そうか? もうそんなに経つのか。」

「あー年取ると時間が経つ感覚鈍るもんね。 弦一今何歳?」

「確か今年で四十だったか…。」

! 蓮二ものらんでいい!」

「ぷくくっ、と柳マジ最高ー!」

「丸井!」

「真田、ここ店ん中だぞ…。 ブン太もも赤也ももう少し静かに笑え。」

 

 

 

 

 

ジャッカル君が周りの目を気にしつつ私達を宥める。

弦一もハッとして謝りを入れていた。

ったく熱くなると周りが見えなくなりやがって。

 

 

 

 

 

「とにかく、久しぶりっスね。 幸村部長もいりゃよかったんスけど…。」

「そうですね。 この後寄って帰りましょうか。」

「お、ええのう。 元気しとるか見に行こうぜよ。」

の報告もあるし、久しぶりに精市の様子を見に行くのもいいかもしれないな。」

「じゃあやっぱケーキ!? ケーキ買ってく!?」

「手ぶらで行くのもあれだけどケーキだとお前が全部食うだろ。」

「あ、勝手に話進んでるけど先輩はこのあと大丈夫っスか!?」

 

 

 

 

 

突然話の矛先が私に向いた。

ちょ、待てよ!

心の準備がま、まだ…!

つか、断るわけないじゃん!?

幸村君のお見舞い!?

上等じゃんゴラァ!

 

 

 

 

 

「もう全っ然オ「だからお前は帰ってすぐ夕飯だろう。」

 

 

 

 

 

弦一郎ォォォオオオオオオー!!

 

 

 

 

 

「大丈夫だっての! それにちょっと時間あけないとお腹入んないし?

それに幸村君にまだ一度も挨拶してないなんて失礼極まりないというか…」

「ククッ、真田。 今日くらいええじゃろ。 みんなして行ける日なんてそうないしのう。」

「…まあ、そうだな。 家に連絡入れておくんだぞ。」

 

 

 

 

 

だから何故お前はそんなに保護者ぶるんだ。

私がギロリと弦一を睨み付けると、弦一は倍の眼力で睨み返してきた。

 

 

 

 

 

「そういやもうすぐバレンタインだなー。」

 

 

 

 

 

丸井君が頬杖を付きながら端っこに立て掛けられたバレンタイン特別メニューの広告を見て呟いた。

そういやそうだっけか?

やべ、私まだ何にも買ってないや。

 

 

 

 

 

「去年は俺幸村君に個数負けたんだよなー悔しいー。」

「何でも一番って本当すごいっスよね、部長。」

「そういえば、さんは誰かにあげるんか?」

「え、私? うんあげるよ。」

「ええ!? マジで!? 誰!?」

「えっとーお父さんとお爺ちゃんとー弦一とー弦一のお兄ちゃんとー弦一のオジサン。」

「つまりは全て義理チョコってわけか…。」

「えーズルいッスよ! 副部長だけもらえるとか不公平ッス! 俺にもくださいよ!」

「いや、これは毎年のお決まりだし、つか全部市販だからお金も掛かるし…つまりはヤダ。」

「やっぱ先輩ってケチッスね!」

「んだとゴラァ!!」

 

 

 

 

 

切原君の胸倉を掴む勢いで立ち上がると、

ちょうどオーダーしていた物が次々に運ばれて来たことにより、見事にタイミングを失った。

オーダー品が全部いっぺんに運ばれて来たので切原君がぶつくさ文句を垂れていた。

へん、ざまーみろ。

焼肉丼食いながらパフェに乗っかったアイスでも頬張ってろ。

 

 

 

 

 

「なー。 今年はバレンタイン手作りにしねえの?」

「しないの。」

「どうせ面倒くさがってるか料理出来ないんでしょ。 先輩が料理してんのとか想像できねえし!」

「よくわかったね切原君。 まったくその通りだよ。」

「威張るな。 少しは女として恥じたらどうだ。」

「んだお前、今年はチョコいらんみたいだな。」

「ふん、百円で買ってきたチョコを配っておいて何を言うか。 お返しが目当てのくせしおって。」

「むむッ、バレてる! ちょっとそれオジサン達に言ってないでしょうね!」

「最低な女じゃの…。」

 

 

 

 

 

気がつけば何故かみんなから哀れんだような、蔑んだような視線を向けられていて居心地が最高に悪かった。

 

 

 

 

 

「…あーでもー…今年は作ろうかなって考えたりもしてた…あはは。」

「誰に毒味させる気なんだ?」

「テメくそジャッカル! 口を慎め!」

「どうせ愛しの精市にだろう。」

「ゴラァ柳! テメェか仁王君にいらんこと吹き込んだ犯人はァア!!」

「へー部長や副部長にはあげてただのレギュラーの俺にはくれないんスか。 何か人選んでるって感じっスね。」

「だから、なんでそうなんの!?」

 

 

 

 

 

拗ねたように、だけど豪快に焼肉丼を頬張る切原君はきっとパフェに乗っかったアイスを気にしているに違いない。

さっきからチラチラとパフェのアイスを見ているのを私は知っている。

 

 

 

 

 

「じゃあ俺の分も頼んだぜい。 楽しみにしてるから。」

「お、じゃあ俺も期待しとるぜよ。」

「俺も俺もー!」

「だから、ヤダって言ってんじゃん食ってないで聞けよお前ら。」

「ところで仁王君、その気味の悪いサンドイッチは美味しいのですか?」

「うーん、見たまんまってとこかの。 口の中が実にカオスじゃ。」

「色エグいじゃんソレ。 絶対可笑しいだろい。」

「宇治とチョコ、トマト、茄子、苺に胡瓜、それと玉子、あとはバナナとオレンジと言ったところか。」

「おお、たぶん正解。 さすが参謀やの。」

「相変わらず蓮二の分析力はすごいな。」

 

 

 

 

 

きっれーに話変えやがって!

いい度胸じゃん柳生比呂士!

つか何ちゅーもん食っとんじゃアンタは!

茄子と苺!? 胡瓜とバナナ!?

どんな組み合わせだ!

 

 

 

 

 

、さっきから言おうと思っていたがスイートポテトの熱でアイスが半分以上溶けかかっているぞ。」

「早よ言えやこんにゃろ柳ー!」

 

 

 

 

 

結局切原君は何とか間に合って溶けていないアイスを嬉しそうに頬張っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2007.02.12 執筆

次回神の子登場。