Warm Corner 101
、可愛い子ぶりたいお年頃です。
「いらっしゃい。 久しぶりだなみんな。 元気にしてた?」
「ウィーッス! 部長こそ元気でした!?」
「ハハハ、相変わらず赤也は元気だな。 まあ座りなよ。」
「幸村君! 今日のお見舞い品はシュークリームだぜい!」
「ああ、ありがとう。 せっかくだから食べていいよ、さんも。」
「え、ええ!? あ、え、はい!」
いきなり話を振られて思わず吃る。
ああ、入院していたってその輝きは衰えてなどいないのですね!
お見舞い品はケーキ派の丸井君とバトった戦利品です!
決して私の好みを押し付けようとかそんな差し出がましいことは……ちょこっとだけです!
「んじゃ、いっただっきまーす!」
ゴラァ丸井貴様ァァアアア!
テメェはケーキ派だっただろうが!
それは私が幸村君のために選んだ高級シュークリーム(一個百九十八円!)なんだからなあ!
こンの無類の甘い物好きが!
「さん、どうだいマネージャーの方は。 もう慣れた?」
「はいバッチリ!」
「おや、昨日は全くと言っていたではありませんか。」
テメェは黙ってろ紳士!
私と幸村君の会話に口を挟むな。
「明日は初の練習試合だろ? 大変だろうけど頑張って。」
「全っ然心配いりませんよ! 幸村君こそもう少しの辛抱だから頑張ってね!」
「ああ、ありがとう。 早く退院してビシバシ指導していかなきゃな。」
「幸村君ー最後の一個になったけど食ってもええ?」
テメェ丸井ィィィィイイイイイイ!!
見舞い品全部食ってどうすんだこの野郎!
私ら全員金の出し損じゃねぇかふざけんなよ!
テメェの為にみんな金出したんじゃねっつの!
つか幸村君の分と私の分置いとかんかたわけがぁぁあああ!
「ああいいよ。」
よくありません!
決してよくありませーん!!
「幸村、これはお前にとだな…」
「そうだぜブン太。 一つくらい幸村に置いとけよ。」
「へいへい、わかったよ。
ンだよ、だからの言うことなんて聞かずに一個百円のを十個買えば良かったんだろい。」
みんなにアレコレ言われて渋々と最後の一個を箱へと戻す丸井君。
あー危なかった。
弦一、ジャッカル、グッジョブですホント。
救世主です。
たまにはいいことするじゃん。
「ゆ、幸村君…食べないの?」
「え、ああ、じゃあ一つ貰おうかな。」
「ほい幸村、投げるぜよ。」
「ありがとう。」
「仁王、食べ物を投げるな。」
「へいへいすまんの。 てっきり俺は参謀やのうて柳生に怒られる思たぜよ。」
幸村君が仁王君の投げたシュークリームをキャッチして袋を開ける。
早く食べないといつあの赤毛のスナイパーが食っちまうかわかったもんじゃないからね。
それだけは絶対に許せないわ。
だったら私が食ってやるっつの。
「うん、美味しい。 久しぶりだなシュークリームなんて食べたの。 いつも丸井の好みでケーキだったから。」
そう言って柔らかく微笑んだ幸村君にみんなが笑う。
ただ私だけが間近で見てしまった普段見慣れない幸村君の眩しい笑顔にやられていた。
これぞまさに微笑みの爆弾!!
やばい何てすごい威力の兵器なんだ!
「あ、そだ! 幸村部長聞いてくださいよー!」
「ん、どうしたんだ赤也?」
「もうすぐバレンタインっショ? 先輩が部長と副部長にだけあげるって言うんスよ〜!」
「え?」
いい度胸じゃねえか切原赤也!
そんなに義理チョコが欲しいかゴラァ!
何で今ここで本人である幸村君にそういうこと言うかな貴様わァァアアア!
「や、ほら。 やっぱりこれから先お世話になるから…」
「やっぱり人選んでるよこの人あーヤダヤダ。 醜い大人の戦法って奴っスか。」
「……切原君は私が好きなのか嫌いなのかどっちなのかな。」
「どーでもいっス。」
「上等じゃおもて出ろや切原ァァアアア!」
「あ、あのさん?」
「はい、幸村君何でしょう!」
振り返ると目をパチクリさせた幸村君が私を見ていた。
しまった私としたことが…!
つい戦闘モードに切り替わってしまったじゃないですか。
「楽しみにしてるから、よろしくね。」
「……え?」
「あれ、くれるんじゃなかったの? バレンタイン。」
「ああああああげますとも! 初手作りさせていただきます、はい!」
「ハハハ、それはそれは楽しみにしてるよ。 怪我はしないでね。」
天使のように微笑む幸村君はまるでよく私の夢の中に出て来る王子様そのもので、
思わず鼻血が出るかと思った。
素敵すぎるよ幸村君!
これは今から家に帰って猛練習しなきゃ!
決して腹を壊すような物はあげられない!
「…それでは、そろそろ帰るか。」
「ああ、もうこんな時間か。 気をつけて帰ってくれよ。 今日はみんな来てくれてありがとう。」
「また何か持って来るからな! 楽しみにしてろよ!」
「うん、楽しみにしてるよ。」
あれからペチャクチャとそりゃあもう喋る喋る。
気がつけば外はオレンジ色から真っ黒に移り変わろうとしていた。
たぶん弦一が切り出さなかったら看護婦さんあたりが呼びに来てただろうな。
みんながまだ名残惜しそうに一言一言幸村君に伝えて病室を出ていく。
そんな中、最後になった私は幸村君に呼び止められた。
「あのさ、さんにお願いがあるんだ。 明日の練習試合のことなんだけど…。」
「?、何でしょう。」
病室の外が少し騒がしい。
弦一が喧しい!と一喝していたけどその声の方が喧しかった。
「明日の相手校に、タチの悪い奴が一人いてね。 ソイツがうちの赤也を良く思ってないらしいんだ。」
「切原君を?」
「うん、赤也あんなだから、手当たり次第に敵を作っちゃうからね。
それで、明日もたぶんソイツは赤也に突っ掛かってくると思う。」
「それで、私にどうしろと…。」
「出来るだけそうならないように見張っててほしいんだ。
赤也はたぶん売られた喧嘩は簡単に買っちゃうから…なるべく二人の接触を避けてほしい。」
「わかった。 相手はどんな人?」
「一人だけ茶髪のロン毛だからすぐわかると思う。 頼んだよ、さん。」
「まっかせといてください! もし喧嘩しようものなら私が二人とも張り倒しますよ!」
「ハハハ、頼もしいな。 もし何かあったらまたここに来てくれてかまわないから。」
幸村君と二人きりの時間と二人きりの約束を交わした私はご機嫌で病室を出る。
すると何故か張り倒された。
「痛っクソ思いの外痛い!」
「いつまで待たせる気だ! しかもお前、小母さんに連絡入れとらんかったな! 今泣き声で電話がかかって来たわ!」
「携帯の電池切れてたの! しかも母さんいつの間に弦一と番号交換なんてしてたわけ!?」
「お前がこうなることを見込んで小母さんが俺に頼み込んで来たんだたわけ!」
「むー…こうなることがわかってたからワザと教えてなかったのに…。」
家に帰ると、やはり半泣きのお母さんが私に飛び付いて来た。
あーいつもご飯は率先して家で大盛り食べてたからなあ…。
それにしても我の母親ながらにこのキャラはうざいねぇ…。
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2007.02.13 執筆
ちょこっと長めでごめんなさい。 神の子出血大サービスです。