Warm Corner 101

 

 

 

 

 

、怖がりなお年頃です。

 

 

 

 

 

「お前、切原じゃん。」

「んあ、何スか? つーかアンタ誰?」

「んなこたぁどうでもいいから顔かせや。 思い出させてやるからよ。」

 

 

 

 

 

ノーーーーーーーー!

私が柳君に頼まれたアイシングの為の氷を貰いに行ってる間に何やら危険な雰囲気です。

これは幸村君が昨日言ってた最悪の事態なのでは!?

糞ったれ!

今日一日私がどんな思いで見守ってたと思ってんだこんにゃろっ!

って、そんなことより早く止めないと!

切原君はただ今男子トイレ前でウンチ色でロン毛の男に捕まりました。

トイレから出て来たところだったのが唯一の救いです!

 

 

 

 

 

「あーっと、アンタ前の試合で俺にコテンパンにやられた、とかそんなんじゃないっスか?」

「ンだと? つーかやっぱ俺のこと覚えてんじゃねえか。」

「いんや、覚えてねっス。 俺に喧嘩売って来んのって大体そんな理由なんで、アンタもかなーって思っただけなんで。」

「っ、お前ふざけてんのかこンのワカメ野郎!!」

 

 

 

 

 

ロン毛が怒りを露にして切原君の胸倉を掴み上げる。

それに動じないあの子はなんて肝が据わってるんだ…。

さすが日頃弦一に扱かれてるだけあるわ。

じゃなくてッ……!

 

 

 

 

 

「やめんかアンタ達! 喧嘩すんじゃないっての!」

「ああ?」

「ひぃっ!」

 

 

 

 

 

振り向いたのは胸倉を掴んでるロン毛ではなく、掴まれている方の切原君だった。

な、なんて態度の悪さ…!

 

 

 

 

 

「ちょーっと口出さないでくれます? 俺とコイツの問題なんで。」

「寝言は寝て言いなさい! 誰が喧嘩なんて許すと思ってんの!」

「うっせーなアンタ! コイツも喧嘩買ったんだし放っとけよ!」

「痛っ!」

 

 

 

 

 

ロン毛が切原君の胸倉を放して私の肩を押した。

思わず後ろに二・三歩下がる。

 

 

 

 

 

「おいアンタ、先輩に暴力振るったら、アンタ…潰すよ?」

「上等じゃん。 オラ潰してみろよ!」

「うぎゃっ!」

 

 

 

 

 

いきなり首根っこを引っつかまれて引き寄せられる。

何すんだこの男!

女に手を出すたぁ男の風神にも置けん奴よの!

 

 

 

 

 

「って、切原君…? アナタお目々の方赤くなってませんか…?」

「ふーん、アンタ命知らずじゃん。 コート出ろよ、相手してやっから。」

「そうこなくっちゃ。」

 

 

 

 

 

ハッ、こりゃいかん。

止めなくては!

今日試合したコートじゃないぽつんと一面だけ離れた場所にあるコートへと入っていく二人を慌てて追い掛ける。

ジャッカル君もう少し氷待っててね!

恨むんなら私に頼んだ柳君を恨んでちょうだい!

 

 

 

 

 

「やめんか二人とも! 問題になったらどうすんの!」

「あーうるせぇ黙れよブスが!」

「ンだとゴラァ! もういっぺん言ってみろや糞がぁあ!」

 

 

 

 

 

私がロン毛に掴み掛からん勢いで向かっていくと、切原君に肩を掴まれ制止させられた。

いけない私ったらつい熱くなっちゃった…!

これじゃミイラ取りがミイラになるってやつじゃないの!

あれ、違ったか…?

 

 

 

 

 

「先輩、マジ危ないんで下がっててくださいよ。 コイツ、絶対ぇ許せねー。」

「ちょ、切原君…!」

「二度とテニス出来ねえ体にしてやるよ! ほら、ラケットちゃんと握ってねえと顔面潰れるぜ!」

「き、切原…「赤也ァァアアア!」

 

 

 

 

 

ガチャーンて音とバチーンて音とズサァァて音が立て続けに聞こえた。

たぶん最初の音がフェンスの音で次が怒り狂った弦一が切原君をシバいた音で、

最後のが切原君がすっ飛んだ音だと思う。

いつの間にか半泣きの私は慌てて弦一を見た後、入り口に視線を向ける。

そこには立海のみんなが勢揃いしていた。

 

 

 

 

 

「やれやれ、女性を泣かせるとは…切原君、少し熱くなりすぎです。」

「つーか何してんだバカ也。 小便にしちゃちと長すぎんじゃねえの?」

「プリッ。」

「まったく、も帰りが遅いから道に迷ってんじゃねえかって心配したじゃねえか。」

 

 

 

 

 

困ったように笑ってそう言ったジャッカル君の手にはクーラーボックスを冷やすために入れておいた冷却剤が握られていた。

ご、ごめんよジャッカル君!

恨むどころか彼は私の心配までしてくださっていたとは…!

 

 

 

 

 

「まあ大体予想はついていたがな。 赤也が他校生の喧嘩を買った確率、94パーセントだ。」

だったらさっさと止めに来いや役立たず!

私切原君の目が赤くなるなんて聞いてなかったんだから! めっちゃ怖かったじゃんか!」

「ほう、は初めて赤目を拝んだというわけだな。」

「いや、別に感心してほしいわけじゃなくてだね……もしもし柳君?」

 

 

 

 

 

何やら私達があーだこーだ言ってる間に弦一と切原君とロン毛も上手く纏まったみたいで、

振り返ればもうロン毛の姿はなかった。

 

 

 

 

 

「ほら、もう俺達も帰るぞ。」

 

 

 

 

 

弦一がしょぼんと俯いた切原君の首根っこを引っつかんで踵を返す。

何もなかったようにコートを出て行くみんなの背中を見つめ、私は何か急に胸が苦しくなった。

何故か、無性に…

 

 

 

 

 

「あのさ、弦一、先帰ってて。」

 

 

 

 

 

私はそれだけ言うと、みんなには内緒で駆け足で幸村君の入院している病院へと向かった。

彼ならきっと、この蟠りを取り除いてくれると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2007.02.13 執筆

うちの柳はあんまりデータマンらしくない。