Warm Corner 101
、前向きなお年頃です。
「よっ!」
「…何だアンタか。」
「ンだよ誰ならよかったワケ?」
「幸村君。」
「いや、ありえねえだろい。」
授業をサボって屋上でぽつんと空を見上げていたら、
同じ考えだった丸井君がガムをくっちゃくっちゃ噛みながら私の隣に腰を下ろした。
「残念、幸村君は病院デス。」
「わかってるよ。 昨日も会ったし。」
「へえーやっぱりあの後幸村君とこ行ってたんだ。 柳の言った通りだな。」
「柳君が…?」
「どうせ幸村に慰めてもらいに行ったんだろって。」
「べっ別に慰めてもらったワケじゃ!………もらったけど。」
「くくっ、素直やの。」
「!、仁王君!」
気がつけば丸井君の反対側の隣に仁王君が座ってて苦笑いを浮かべていた。
いつの間に…!
「今B組は自習なの?」
「まあな。 C組は自習じゃないだろい。」
「ぐっ…!」
「そういや、俺が教室抜け出した時もおもいっきり授業しとったのう。」
「ぐぐっ…!」
「つまりはれっきとしたサボり、だろい。」
「……弦一には、内緒ね。 これ三人の秘密ね。」
「さあねえ。」
「三人の秘密だろ!」
「口悪なってきとるよさん。」
ヨシヨシと宥めるように頭を撫でられ、私は思わず押し黙る。
くそぅ、まるで飼い馴らされてるみたいだ。
何か手慣れてるな仁王君。
切原君みたいなのがいるからおてのものなのかもしれない。
「なして昨日あんなに泣きそうな顔しとった?」
蹲るようにして膝を抱えると、仁王君から突然そんなことを聞かれた。
驚いて顔をあげると丸井君と目が合った。
本当、いつの間に目の前に移動してんだか…。
「さんは、赤也に似とる。 手のかかる猛獣犬みたいじゃ。」
「例え方が超ムカつくんだけど。」
「すーぐキレるし、何かと煩ぇし真田にどやされる回数も半端ねぇし。
けど、それも引っくるめてアイツは俺らの後輩だからな。 見放すワケにもいかねぇんだよ。 もちろんもな。」
「そゆこと。 さんも、マネージャーになってくれたからには俺らの仲間じゃけん。
落ち込んだ顔されると、放っとけないんよ。」
「………ありがと。」
何だ、良い奴らじゃん。私は少し鼻をぐずってお礼を言った。
みんな、切原君を大切に思ってるみたいで、何だかすごく安心した。
「私も昔ね、切原君みたいに熱くなりすぎて周りが見えなかった時があったんだ。」
「昔って…小学生の時?」
「うん、それで私は人を…良きライバルを傷つけた。
一時の高ぶった気持ちで相手を傷つけた自分自身が怖かったし、ものすごく後悔した。
だからかな、幸村君との約束を守りたいってのもあったけど、
切原君のことを絶対に止めたかったし、少しでも力になりたかった。」
見上げた空はあまりにも今の私と正反対で、さんさんと輝きを放ちながら青々としていた。
ったく、空気読めよな。
こう言うのを最近では何て言うんだっけ?
……あーそうそう、KYだKY。
この前小百合に教えてもらったから早速弦一に使ったんだよね。
SKYってのもあるらしくてそれを連呼したら気を悪くした弦一が柳君に意味を聞きに行ってたっけ。
意味知らないだろうと思ってたけどやっぱり知らなかったんだよね。
全く期待を裏切らない男だ。
そういやあの後奴の気が済むまでずっと怒鳴り散らされたなあ。
私って忍耐あるよね絶対。
「……結局止めたのは弦一だったんだけどね。」
「んであんな顔してたってワケか。 お前も案外責任感強ぇじゃん。」
「丸井君は案外優しいね。」
「お前ら二人褒めてんのかけなしてんのかどっちじゃ…。
それにしても、昨日と違って元気出たみたいじゃのさん。」
「それはやっぱり幸村君のおかげでしょ。」
「…そうか。」
どこかのクラスが体育でもしてるんだろうか。
仁王君が苦笑いを浮かべたと同時に、グラウンドから金属バットの鳴る音がした。
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2007.02.14 執筆
ブン太と仁王が同じクラスだといろいろ問題多いと思う。