Warm Corner 101

 

 

 

 

 

、秘密事の多いお年頃です。

 

 

 

 

 

「チーッス。」

「あ、切原君! うっわ、すっげえ顔!」

「……先輩だってすっげえ頭じゃないっスか。」

「こ、これは今朝爆発事故が起きてだねっ…!」

 

 

 

 

 

朝練前に靴箱付近で切原君に遭遇。

共に部室へと向かう。

昨日から朝練が始まったんだけど切原君はサボったから今日が初出勤。

昨日あの後弦一からの制裁を喰らって右頬がヤバイくらい腫れ上がった切原君の顔は、

可哀相を通り越して面白かった。

 

 

 

 

 

「爆発って…何やったんスか…?」

「ヒミツー。」

「いっスよ別に。 どうせろくなことじゃないんでしょ。」

「ほう、お前、その言葉後で後悔すんなよ。」

「はあ?」

 

 

 

 

 

部室に着くとありえんくらいみんなに馬鹿にされ、ドリフみたいだと仁王君が喜んで私の頭を写メっていた。

一体何に使う気だ。

 

 

 

 

 

「鍛練中、隣からすごい音がしたと思ったらやはりお前だったか。」

「いやはや申し訳ない。 珍しく早起きして慣れないことにチャレンジしてみたら家電が爆発してさーアハハ。」

「不良品だったのですか?」

「いや、単に私の使い方に問題があっただけ。」

「………小母さんは?」

「泣きながら怒ってた。」

「可哀相に……。」

 

 

 

 

 

ジャッカル君が哀れみの視線を私に向けた。

ンだよお前ら。

シケた面しやがって。

 

 

 

 

 

「で、は朝から何をしてたんだ? まあ大体の想像はつくがな。」

「新たなる課題への挑戦。」

「わかんねえよ。 具体的に言えっつの。」

「物分かり悪いっスねー丸井君。 まるで私自身を見ているようだよ。」

「最ッ高のけなし文句だな。」

「ありがとよ。」

 

 

 

 

 

どうやら柳君以外は本当にわからないといった様子で、みんなあれこれ失礼なことを抜かしては笑ってた。

そんな中、気付かれないよう柳君へと近寄り、こっそりと早めに手を打つ。

 

 

 

 

 

「柳君、内緒ね。」

「ああ、わかっている。」

「さっすが参謀話が早い!」

「ただしその頭、授業が始まるまでに直しておけ。 クラスの奴らの気が散って授業に集中できん。」

「……はいよ。」

 

 

 

 

 

私の女としての身嗜みについての注意じゃないのかよ。

そっスか。

クラスメートの心配かコラ。

 

 

 

 

 

「アンタ頭に鳥でも飼ってるの?」

「まさか。 冗談キツいよ。」

「キツいのはアンタの頭だよ。 何そのドリフみたいな頭。

何やったらそんなんなるの。 パーマかけてもそこまで綺麗にならないよ。」

 

 

 

 

 

一時間目が終わって先生が教室を出て行くと早々に小百合が厳めしい言葉で攻めて来た。

なんで見逃してくれないかな…。

 

 

 

 

 

「さゆポン、私不器用なのかねえ。」

「つーか無茶しすぎ? 初めてなら溶かして固めるだけでいいじゃん。」

「はいムーリー! 幸村君にあげる時点で妥協など許されるか!」

「だから無茶だっつってんの。 家電爆破したくせに。」

「だから何だ! そもそも家電というものは爆破するために存在「してないわよ。」

 

 

 

 

 

ですよねー。

一体どんな家電なんだって話ですよね。

 

 

 

 

 

「で、どうするの? バレンタインまで時間ないよ。」

「………徹夜?」

アンタねえ、もっと違うところにそういう集中力使いなさいよ。 本当勝手な奴。」

「だってーバレンタインってー恋人達の一大イベントじゃないですかー。」

「恋人って…誰と誰のだよ。」

「モチロン私とゆ「俺じゃろ?」

「んな馬鹿な。」

「冷たいのう。」

 

 

 

 

 

何故かいつの間にか私と小百合の間に加わっていた仁王氏に本気で尊敬の念を伝えたい。

忍者かワレ。

 

 

 

 

 

ちゃんはバレンタインに備えてイメチェンしたんじゃな。」

「違いますけど。」

「そんなドリフみたいな頭に変えて、俺のハートをわしづかみ作戦か? なかなか策士な奴やのう。」

「違うっつってんだろ!? つか何アンタ! ドリフ好きか!?」

「DVD全巻あるぜよ。 いる?」

「いらん!」

 

 

 

 

 

何なんだこの男ぉぉおお!

一体何しに来た!

ドリフ勧めに来たんか!?

ドリフの回し者か!?

 

 

 

 

 

「で、冗談はさておき、実際のところ何作っとるんじゃ?」

「秘密だよ。 何で教えにゃならん。」

「食べる側として知っときたいじゃろ。」

「やるなんて一言も言ってない。」

「なら幸村のやつを奪うまでじゃ。」

「んなことしてみろ! シュークリームに納豆入れて口に突っ込むぞ!」

「ほう、シュークリームねえ…。」

 

 

 

 

 

しまったぁぁぁああああ!

つい口がっ……

 

 

 

 

 

「しゅ、しゅっ、しゅ、」

「何じゃ。」

は今どうごまかそうか考えてるところなのよ。」

「わざわざ解説ありがとさん。 こんな馬鹿が友達やと犬飼さんも大変じゃな。」

「全くね。 損はしても得がないもの。」

「コラコラコラコラ。 傷付くからその会話やめぇい。」

「ごまかすの諦めたんか?」

「うん、何にも思い付かなかった。 だから無駄な抵抗はやめにした。」

にしては利口だね。」

 

 

 

 

 

やかましい。

何だか毒舌な二人に同時に攻められるといつもの倍パンチを喰らう。

いつもは涙目で済んでも、今日は傷心してトイレに篭りたくなる。

 

 

 

 

 

「つか仁王君何しに来たの? 私を罵りに来たなら直ちに帰りたまえ。 ゴートゥーユアークラスルーム!」

「トゥーのところだけやけに発音良かったの。」

「どうもありがとう。 さあ何しに来たの!」

「……お誘いに来たんじゃ。 14日、部活後みんなで幸村んとこ行くかって話になっての。

さんもどうかって聞きに来たん「行く!」

「まあそう言うとは思とったけどな。 んじゃ当日、一人で突っ走って行かんと、ちゃんと待っとけよ。」

「はーい!」

 

 

 

 

 

私が元気よく返事を返すと、笑いを堪え切れなくなった仁王君が

朝の部室の時と同じように再び腹を抱えて笑い始めた。

どうやら本当に仁王君はドリフが好きならしい。

この日一日、私の髪を見ては涙を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2007.02.14 執筆

私の料理の腕は即席ラーメン並みです。