Warm Corner 101
、電話派なお年頃です。
○/△/□ 11:28
From:白石くん
Subject:RE;
____________________今日は練習試合の後みんなでタコ焼き食いに行くねん。
監督が奢ってくれるらしいわ。
が大阪来た時はめっちゃうまいタコ焼き屋紹介したるな。
俺のオススメやで。
「えーっと、“結構です”と、送信。」
「相変わらず酷ぇ返事だな、毎回毎回。」
メールを送る私の背後で着替えを済ませたジャッカル君が哀れんだ視線を私に向けてくる。
あの日から(一方的な)約束通り毎日白石君からメールがくる。
いい迷惑だ。
「まだ返事かえしてもらえるだけ羨ましいッスよ。 俺なんて送ったって無視ッスよ。」
「赤也のうざいもん。 内容に中身がない。」
「中身がないって何スかそれ! 普通っしょ!」
「あーだめだめ。 返す気まったく起こんない。」
「何で!? んでたまに返って来たと思ったら食堂までジュース買ってこいっスよ。 泣けてきません?」
「いい具合にパシられてんな赤也…」
「アンタにだけは言われたくない。」
あーもううるさいうるさいうるさい。
メールなんかぶっちゃけ面倒臭くてありゃしないんだ。
携帯持ち歩くのも嫌なのに。
私に何を要求する気か。
それに赤也、ジャッカル君は一応先輩だぞ。 敬いたまえ。
「そーいや、真田とメールしたりすんの?」
「するわけないだろ丸井君。」
「だよなー。」
一瞬で終わった私達の会話に口を挟んできたのが
またこれ面倒な彼、仁王君だ。
「ほう、じゃあ電話か?」
「…弦一、たぶんメール使えないからね。 いつも用がある時は電話か直接部屋に来る。」
「ぷぷ、親父くせ〜。」
「丸井君、そのように言っては失礼ですよ。」
「だってこの年でメール使えないとか、おかしくね? 流行についていけない親父じゃん。」
「携帯買った時なんて『この使い方を教えてくれ』ってわざわざ私のとこまで来たもん。 呆れたね。」
「メールの使い方は教えんかったんか?」
「教えたよ。 でも首捻ってたから理解してないんだと思う。」
「マジで!? ぷぷ〜!」
丸井君と赤也が嬉しそうに吹いて笑う。
何がそんなに面白いか。
「でも俺、一回だけ真田からメール着たことあるぞ。」
「マジかよジャッカル。 嘘だろぃ?」
「いや、マジで。 俺が熱で学校休んだ時、クラス一緒だったからいろいろ連絡くれた。」
「何気に親切ッスね副部長…。」
「クソ真面目な男だからね。 でも私十年以上一緒にいるけど一度もメールしたことないしメアド知らない。」
「あれじゃね? に教えると何かとんでもない事に悪用されそうだからじゃねえの?」
「んだとコラ! 弦一のメアドなんか何に使うってんだ!」
「危ないサイトに登録、とか?」
「誰がするか!」
何よみんなして!
特に丸井ブン太!
まったく、いい加減にしろってんだ。
でもあれだな。 弦一メール使えたんだな。
知らんかった……。
私達がそんなこんなでワイワイ騒いでいると、部室のドアがガチャリと開いた。
「騒がしいね、みんな。 相変わらずだな。」
「ゆきむ「幸村君!!」
爽やかな風と共に姿を現した笑顔の幸村君が やあ と言いながら部室へと入ってくる。
ちょ、何!?
サプライズ!?
私への誕生日プレゼントか何か!?
いや、誕生日なんてまだまだだけど…。
「どうしたんだよ幸村、病院は?」
「部長お帰りッス! もう大丈夫なんスか!?」
「ああ、しばらく外出許可が出てね。 やっぱり一番に顔見せするならここしかないだろ?」
「それならそうと言ってくれればよかったのに…びっくりしたぜよ。」
「うん、驚かせたかったからね。 みんな元気そうで何よりだよ。 俺がいない間に変わったこととかない?」
「特にはありませんね。 もう幸村君もご存知の通り、さんがマネージャーになったこと以外は。」
「ああ、さん久しぶりだね。 どう? もう立派なマネージャーになれたんじゃない?」
「そんな滅相もない! 私なんてまだまだケツの青いガキって言うか何と言うかその………」
「おい、お前キャラ変わってんぞぃ…。」
うるせぇお前は黙ってろ!
恥らう乙女は憧れの幸村様の前じゃ何も言えない恋する乙女なんだよ!
「そういえば真田と蓮二は? 姿が見えないけど…まだ外で練習してるとか?」
「いんや、二人は何か先生に用があるとか言ってどっか行っちまったぜぃ。 たぶん今度の試合のことについてだと思うけど。」
「次はどこと練習試合なんだ?」
「氷帝学園ですよ。 なにやら向こうから申し出があったらしいです。」
「へえ〜あの跡部率いる氷帝学園と練習試合か。 見に行きたいな。」
「まあ見に行くくらいなら許可出るんじゃなか? 選手としては…手術が成功するまでの我慢ぜよ。」
「うん、じゃあ次病院に行ったら先生に聞いてみるよ。」
何か知らないけど、幸村君頑張って!!
氷帝学園なんてどんな相手だろうと私達がボッコボコにして必ず勝利を貴方に捧げるわ!
つっても氷帝学園って一体何処の学校だ?
この辺りじゃ全く聞かない名前だぞ。
「あ、先輩携帯鳴ってるッスよ。」
「ああ無視でいいよ。」
「何でだよ、返してやれよ。 っていうかせめて見るだけでもしてやれよ…。」
どうせ白石君だろ!
幸村君の前で他の男とメールなんて出来るものですか!!!!
ちったぁない頭絞って考えろジャッカルが!!
「よくわかんないけど、見てあげなよさん。 可哀想だよ。」
「うんじゃあ見る。」
「……気変わり早ぇな相変わらず。」
「ククッ、単純じゃのう。」
とりあえず愛しの幸村君の為にも携帯を開いてメールを確認。
ほら見ろやっぱり白石君だ。
ちっ、何なんだコイツ。
さっさと試合に行けよ。
「何て書いてあったんスか?」
「何で赤也に教えなきゃなんないのよ。」
「だってすっげぇ嫌そうな顔したから…気になるじゃないッスか。」
「気にならんでいい。 あっち行ってろシッシ。」
「何でッスか! あーわかった男でしょ! そうでしょ! 絶対そうだ!」
「な、何を言うかこの馬鹿め! そんなわけないでしょう!」
「焦るところがあっやし〜! 男じゃないなら見せてくださいよ!」
「誰が見せるかこの馬鹿也! お前いるとややこしいからマジであっち行ってろ! ほら後で増えるワカメやるから。」
「いらねッスよ!」
言えるわけねぇだろマジで。
― そっけないなー、一度は俺にトキめいたくせに(笑) ―
なんて冗談でも幸村君の前でなんて言えねぇよ!
「で、結局のところ、男なの? さん。」
「まままままままっままままっさか〜アハハハハハそんなわけあるはずないッスよ!」
「さん、口調が体育会系になっとるぜよ。」
「絶対男だぜ、ありゃぁ。 彼氏か?」
「違うに決まってんだろうが丸井! 頼むからテメェはいらんこと言うんじゃねえよ!」
「それが頼む相手に対する態度か! 思いっきり脅し口調じゃねぇか…。」
「つーかやっぱり男なんじゃないッスか! 誰!? 相手誰ッスか!? 俺の知らない人!?」
「だから何でそうなんのよ! つーかどさくさに紛れて抱きついてくんなワカメ!」
がばっと前から抱きついてきた赤也を引き剥がす。
ちぇって言った気がするけど今はそれを気にしているどころじゃない。
幸村君への誤解を解かなければ私はこの先きっと生きてはいけない!!
「男じゃないよ! 相手はそうだね…友達だよ!」
「友達? 女?」
「そ、そう! クラスメートの小百合ちゃんって言って超薄情者のお友達!」
「薄情者って…お前ホントにそれ友達か?」
「友達だよ。 薄情者ってところを差し引けばいい子なんだ小百合は。」
「それならいいけどよ…。」
ジャッカル君はなんとか信用してくれたみたいでちょっとだけ一安心。
仁王君はなにやらニヤニヤしてこっち見てるだけでよくわからんし、
丸井君と赤也はまだ何か納得してないみたいな表情してる。
柳生君ははなからそういった話に興味を示していないようで、
肝心の幸村君は相変わらずのポーカーフェイスらしからぬポーカーフェイスでよくわからない!
これで誤魔化せれてたらいいんだけど……!
「さんは…かわいいね。」
「え!?」
「ふふ、じゃあ俺は今日はもう帰るとするか。 またひょっこり遊びに来るよ。」
謎な台詞を残して幸村君は爽やかに去って行ってしまう。(※ビジョン)
なにやらようわからんが丸井君と赤也がじっとそんな幸村君の背中を最後まで恨めしそうに眺めていた。
つーか言ったよね!?
幸村君私のこと可愛いって言ってくれたよね!?
やっばいマジでテンション上がるんですけど!
その日、弦一と柳君が部室に帰って来て私を怒鳴りつけるまで
ずっと小躍りをしていた私を誰もが哀れな目で止めることなく見つめていた。
――――――――――――――――――――――――
2007.03.27 執筆
弦一郎はメールは使えるが電話の方が早いのだ。 私もソレ派だ。