さでぃすてぃっくに愛す
「おい、そこ退け。邪魔でさァ。」
「十分余裕あると思うんですけど。沖田隊長はこんな広い幅も通れないお体をなさっているんですか?」
「相変わらず口の減らねェ女中だな。目障りだから辞めちまえ。」
「局長にクビだと言われたら辞めます。でも沖田隊長以外の隊士の方は皆必要としてくれているみたいなので絶対に辞めません。」
「、お前がいると俺のテンションが下がるんでィ。ほら、これやるから出てけ。」
「いいえ、絶対に出て行きません。それに噛んだガムのゴミなんていりません。」
睨みつけると、真顔の沖田隊長が「真撰組にいることを後悔させてやりまさァ。」と言って私の横を通り過ぎて行った。
途端に安堵の溜め息がほうっと流れ出る。怖かった。何日経ってもこのやり取りには慣れない。
負けないように虚勢を張ってはみるものの、やはり怖いものは怖い。今だって足はガクガク震えてる。
一番隊の沖田隊長にあんな酷いことを言われて、ただの女中である私がビビらないわけがない。
負けず嫌いの性格だからああやって言い返してはみるけど、いつもそれを言った後で何かもっと酷いことをされないかと不安になる。
驚くことに、この間なんて縁側に腰掛けて座っていたら急に後ろから蹴飛ばされたのだ。
もちろん支えのない私の体は前のめりになって簡単に庭へと転げ落ちた。
女にすることではないだろう。酷すぎる。
顔面を強打したため、鼻の頭を擦り剥いてすごく痛かったという散々な記憶がある。
その前なんて足引っ掛けられて隊士がたくさんいる前で豪快に転んだんだ。もはや彼は鬼畜の領域だ。
そもそも、どうして私が沖田隊長にあそこまで酷い物言いをされなくてはならないのだ。何もしていないのに。
心当たりなどこれっぽっちもないが、もしかしたら気づかぬうちに何かへマをしてしまったのかもしれない。
でも今更謝ることなどできないし、この静かな争いがいつまで続くのかと考えたら腹の底から溜め息が零れる。ああ、辛い。
「茶が苦ェ。」
「!!」
そう言って出した湯飲みを突き返される。
条件反射でその湯飲みを受け取ったはいいが、どうしろと言うのだ。
そもそも、他の隊士と同じお茶なんだから苦いなんてそんなことはないはずだ。
だって他の隊士は普通に飲んでいるじゃないか。
君はどれだけ刺激に弱い舌をしているんだ。
「だったら白湯でも飲んでください。」
「俺は茶が飲みてェんでさァ。白湯なんて味気ないもん飲みたくもねェ。」
「じゃあそれ飲んでください。苦いなんてことは絶対にありませんから。」
一度は受け取った湯飲みを力強く突き返す。
だけどその湯飲みを受け取ろうとはしない沖田隊長。
居心地の悪そうな他の隊士の視線があちこちから突き刺さる。
誰も、私達の間に口を割って入ろうとはしない。だってそれは死を意味するから。
きっと入った奴はこの目の前の鬼畜男に想像も絶する反撃をくらうに違いない。おお恐ろしい。
「…はあ」
じっと見上げてくるだけでピクリとも動こうとしない沖田隊長に痺れを切らした私は、身体中に溜まっていた息を一気に吐いた。
それでも消えないこのモヤモヤ感。
「どうして沖田隊長はそこまで私に意地悪するんですか?」
もういい加減にしてくれ。
そんな思いを込めてずっと胸に仕舞いこんでいた疑問をぶつける。
「そんなの決まってるじゃねェですかィ。」
沖田隊長は目をぱちくりさせて、言った。
「あの土方の野郎が連れて来た女中だからでィ。」
…は?
頭が痛い。
信じられない、そんな気持ちでいっぱいなのは私だけだろうか。
今この目の前の男は何と言いやがった?
土方?…ああ、副長?副長が何だって?
副長が連れて来た女中だから?誰のこと?え、私?
「…そ、そんな理由?」
「十分でさァ。」
「どこがですが理不尽ですよ!!」
思わず怒鳴りつけたら周りの隊士が驚いてこちらを見た。
それでも沖田隊長は表情をピクリとも動かさずに苦いと言ったはずのお茶をずずずと音を立てて飲み始めた。
苦いって言ったくせに飲まなきゃいいのに…!!
私が副長に連れられて真撰組にやってきたのはちょっと前。
それまで私は江戸のファミレスでウェイトレスをして働いていた。
ある日、そこにやってきたのが真撰組副長、土方十四郎だった。
副長が座る隣のボックス席の客であるオッサンにセクハラを受けていた私。
我慢しようと我慢しようと自分に言い聞かせていたのだけれど、副長が気づいて助けてくれたのだ。
しかしその助け方が悪くて、相手が逆上したためちょっとした騒ぎになってしまい、店は大混乱に。
気が付けば一部始終見ていた店の店長に「今までお疲れ様」と肩を叩かれていた。
…ああ、クビだ。
そう理解した時、頭が真っ白になった。
やばい、このご時勢、なかなか職が見つからないと言うのに…無職になっちゃった。
顔を真っ青にして固まる私を見て、悪い事をしたと思ったのか、
事を大きくした当事者である副長は「あー」なんて唸り声を上げながら、とりあえず「わり」と謝った。
いえ、いいんですもう…と力なく答えると、そもそもの事の元凶であるオッサンにお縄をかけながら副長が言った。
その、何だ、次の仕事が見つかるまで真撰組で働くか。と。
「総悟、テメェ今日市中見回りの日だろうが。いつまで屯所にいる気だコラ。」
「テメェが行けよ土方。」
「お前が行けェェェエ!」
ああ、廊下が騒がしい。
副長の怒鳴る声が聞こえる。
本当に沖田隊長は何て奴なんだ。上司に向かってその口調。
そこまで肝が据わっていたらある意味尊敬に値する。
まだ何か副長が怒鳴ってはいたけど「へいへいそんじゃァ行ってきやす。」と副長の説教をワザと遮って
沖田隊長は私の部屋の前の廊下を静かに通り過ぎて行った。
段々と遠ざかっていく足音に耳を傾けながら、彼がもうここにいないことを確信して部屋の外へと出た。
するとタバコを咥えながら眉間に皺を寄せてコメカミをヒクつかせている副長とばったり出くわす。
「おう、いたのかお前。見苦しいところ見せちまったな悪い。」
「いいえ、気にしてません。」
「…総悟の奴とはうまくいってんのか?最近ちらほら他の奴から噂が耳に入ってきてるんだがな。」
「うまくも何も…噂どおりだと思いますよ。」
苦笑いを浮かべて視線を沖田隊長が歩いて行った方向へと向ける。もうそこに彼はいないのだけれど。
私の視線を辿って、その先に何もない事を確認した副長は目を少し伏せて短くなったタバコを携帯灰皿に押し付けた。
「ま、我慢できなくなったら言え。一応お前をここに連れて来たのは俺だからな。」
「…はい。」
副長の言葉でふと思い出す先ほどの沖田隊長の言葉。
―― あの土方の野郎が連れて来た女中だからでィ。
思い出したらまた腹の底から沸々と怒りが込み上げてきた。
そんなの、理不尽にも程がある。
騒ぎを大きくしたくなかったから(というよりは騒ぎを大きくすることに少しトラウマがある。)あの時は言い返すのをやめたけど。
本当ならもっと言い返してやりたかったし、可能であるのならあの澄ました顔に一撃を喰らわせてやりたかった。たぶんかわされるけど。
だって、またクビにでもなったらたまったもんじゃない。
きっと今度こそ貯金を崩しながら職探しに明け暮れる日々を過ごさなければならなくなる。それだけは勘弁だ。
「で、新しい職探しはどうなんだ。」
「…なかなか雇ってもらえないですね。もうちょっとここでお世話になりそうです。」
「そうか。ま、ゆっくり適当に探せや。」
「はいそうします。」
じゃぁ俺は仕事が残ってるんでな。と新しいタバコに火を点けながら去って行く副長の背中を最後まで見送る。
はあ、いつまで私はここでお世話になれるんだろうか。
副長はああ言ってくれはしたものの、そもそも私はあの時偶然家の都合で辞めたばかりの女中の穴埋めとして雇ってもらえたわけで。
本当なら私のポジションは新しく募集をかけて別の誰かが就く予定だったのだ。それを横入りのように急遽雇ってもらった私だ。
気に喰わないって人もいるだろう。現に沖田隊長なんてモロそのタイプだ。
局長なんかは何かの縁だしずっとこの仕事をすればいいなんて都合のいい事言ってくれたけど、正直私は肩身が狭い。
嬉しいと思う反面、それではいけないと思い首を横に振ったまでだ。
なので、新しい職に就くまでお世話になると言う約束で私は今ここにいる。それは私なりのケジメでもある。
まあなかなか思うように新しい職は決まらないのだけれど。働く最低限の条件とか考えているとなおさら。
「ちゃん、買出し頼むわ。」
「はーい。」
「ちょっと量が多いかもしれないけど、ごめんね。」
「いいえーいつものスーパーでいいですか?」
「ええ、よろしく頼むわ。これリストよ。」
先輩の女中さんから買出しリストを受け取って屯所の外へと出る。
わー本当だ買う物いっぱいだ。でもまあ一人で持てないこともないだろう。
明らかにマヨネーズが重量を増す原因になりそうだが、ここは雇ってもらった恩義。我慢して持とうじゃないか。
「それでもやっぱり、業務用マヨネーズ十本はキツイかもなぁ…」
自分で買いに行けよ。
そう思う私は恩知らずな人間なのだろうか。
***
「隊長。」
「ああ、わかってらァ。」
確認を求めるような視線を向けてきた山崎に視線もくれずに返事を返す。
俺の視線は真っ直ぐ先にいる一人の男。
鋭い目つきで辺りをキョロキョロと見回している怪しいそいつは紛れもなく攘夷浪士だ。
街中にある団子屋の赤い長椅子に腰掛けながらのその行動は見つけてくれと言わんばかりの存在感だ。
…ありゃァ下っ端だな。
「どうしましょう、捕らえますか。」
「当たり前だろィ。聞くな。」
「ですよね。」
相手に気づかれないうちに車を手前で停めて車から降りた。
足音を立てず気配を消して徐々に団子屋へと近付く。
先を行く山崎と別れて、俺は一度団子屋の裏手を通って先回りしておく。
俺がちょっと離れた場所でスタンバイしたのを向こうから確認すると、物陰に隠れてこっちを見ていた山崎が動き出した。
絶対に相手が気づく前にとっ捕まえろよ山崎。
取り逃がしてこっちに向かわせてみろィ、お前毎バズーカーでぶっ飛ばしてやる。
あんな雑魚は山崎だけで十分。俺の出番なんていらねェや。
「!…くそっ、」
「あ、待て!」
あーあ、発射準備ー。
「ちょっ、隊長まっ…!!」
俺がバズーカーを構えたのに気づいた山崎が引き攣った顔をして向こうの方からこちらへと駆けて来る。
攘夷浪士はまだ俺の存在に気づくことなく後ろの山崎の様子を窺いながら走っている。馬鹿でィ。
目標を定め、ぺろりと舌で唇を舐めて引き金に指をかけたその時だった。
「!!」
―― ああもう、何で…!!
すぐそこの大江戸スーパーから大量の買い物袋を提げて出てくるアイツの姿を捉えた。
「、店ん中戻りなせェ!!」
「え?」
こちらを向いたが驚いた表情を浮かべてその場で立ち止まる。
――…馬鹿やろィ!!
バズーカーをその場に投げ捨て腰元にある鞘を握って駆け出した。
間抜け面で呆けたようにこっちを向いて突っ立っているは向こうから駆けて来る攘夷浪士に気づきもしない。
ちょうど一直線先に不自然に突っ立つ女に気がついた攘夷浪士がニヤリと嫌な笑みを浮かべて腰元に手をやったのがわかった。
「させねェ!!」
金属と金属の重なり合う音。
を後ろに投げるように押し退けて男の刀を受け止める。
どうせ人質にでもしようとしたんだろう。弱っちぃ。女を人質にするなんて男の風上にも置けねェ。
そんな奴ァさっさと
「死んじまいな。」
刀を振り切って相手の刀を背後へと跳ね飛ばす。周囲の悲鳴が上がった。
素早く鳩尾を蹴り上げて後からやってきた山崎へとパスをする。
気を失った男に手錠をかけるのを確認して、後ろにいるだろう人物へと振り返った。
「何してるんでィ。見っとも無ェな。」
「腰が、抜けちゃって…」
「だっせ」と言いながら、間抜け面でははっと笑うに手を差し出す。
腰が抜けて立ち上がれないの俺を見上げる表情が少しだけ強張った。
何警戒してんでィ。
「何もしねェよ。ほらさっさと立ちなせェ。」
「…ほんとに?」
「疑い深い女でさァ。一番傍に置きたくないタイプだな。」
「なっ…!」
ちょっと怒った顔になったを見て、鼻で笑う。
すると、後ろからさっきの攘夷浪士を連れた山崎が声を掛けてきた。
「どうします、隊長。」
「あァ?」
「さん一緒に乗せて帰った方がいいんじゃないですか?」
「…ったく、しょうがねェや。ザキ、お前は後ろでこの男と乗れ。」
「わかりました。さん、大丈夫ですか?」
「…はは、はい、なんとか…。」
大丈夫じゃねェだろ。立てないくせに。
はあ、と溜め息を吐いて地面に転がっている買い物袋を二つ片手に持つ。
結構腕にずっしりと来るこの重みの原因のほとんどが袋から顔を覗かしているマヨネーズだろう。
やっぱりさっき男と一緒にバズーカーでコイツを吹き飛ばすのもアリだったな、と少し後悔をした。
とりあえず、自力で立てそうにないの腕を掴んで無理矢理立ち上がらせる。「痛っ」って聞こえたけどそんなこたァ知らねェ。
「ちょっと痛いです沖田隊長!」
「我慢しやがれ。」
「いだっいだだだだだだだ!何この扱い!ありえないんですけど!!」
引きずるようにして車までを運ぶ。ったく、うるせェな。
叫び続けるを睨みつけて黙ったのを確認すると顔を元の位置に戻す。
すると、先に車に向かっていた山崎が男を車にぶち込んで助手席のドアを開けて待っていた。
「シートベルトは自分でしろよ。」
「…わかってますよ。」
も車にぶち込んで運転席へと移動する。
ブチブチ文句を言いながらシートベルトを締めているを横目に、俺は少しだけ口元を緩めた。
***
夜空。
虫の鳴き音。
ズキズキズキズキ
チラリと袖を捲って見てみれば、
「信じられない。」
少しばかり痣になってる。
何て男だ、沖田総悟。
「痛いよぅ…。」
縁側に座りながら涙目で青くなった腕を擦る。
男に襲われそうになった時は無傷だったのに、その後に痣を作るなんて…。
せっかく助けてもらえてちょっと感謝して好感度が回復しかけたというのに、全てがパアだ。
もっと加減をしてくれてもよかったのに。どうしてああも力強く腕を掴んで引き摺る必要があるんだ。
「………ばか沖田。」
「誰のことを言ってるんでィ。」
「!!!」
びくっと肩を飛び上がらせて振り返ると、柱に凭れ掛かって腕を組んだ状態でコチラを見ている沖田隊長と目が合った。
しまった、失言をした…。ていうか全然気づかなかった!!
誤魔化すように笑ってまた前を向くと、沖田隊長が動いたのが気配でわかった。ひぃっこっちに来る!!
「バカってェのは先に言った方がバカなんですぜ。」
「何ですかその子どもみたいな返しは。」
「俺はまだまだガキでさァ。」
「そうですね、沖田隊長は私より年下ですもんね。」
ほんのちょっとだけだけど…。それは言わずに心の中で呟いておく。
すると、沖田隊長の横顔が少しだけピクリと反応した。
…機嫌、あまりよくないみたいだ。これ以上は刺激しない方がいいかもしれない。
「沖田隊長。」
「何でィ。」
「先程は助けていただいてありがとうございました。」
お礼を言い忘れていたことを思い出し、告げる。
だけどすぐに返事はない。どうかしたのかと思って顔を向けると、
いきなりだったからか、沖田隊長は目を少しだけ見開いて驚いているようだった。
だけどすぐに我に返ったように、
「バカって言った後に言う言葉じゃねェな。」
「隊長があんな乱暴な事するからじゃないですか。」
「腕、見せなせェ。」
「え?」
ぐいっと腕を取られて一気に袖を捲り上げられる。夜風に当たってヒヤッとした。
青々とした腕の一部を見て、沖田隊長の目が少しだけ細められた気がした。
次の瞬間。
「ちょっ…!!」
抵抗する間もなく腕を引かれ、唇を宛がわれる。
柔らかく、温かい感触がして、腕にピリリとした痛みが走った。
思わず顔を歪めるが、同時に熱が上昇して顔に集まってきているのがわかる。
「お、沖田隊長…なにを…!」
数秒そこに唇を宛がっていたかと思うと、急に口を大きく開けて
「いたぁっ!!」
噛み付かれた。
当然のように痛みが身体中を刺激する。
…バカだ。この男は本当にバカだ。
痛みで涙が目に浮かんできたあたりで漸く腕を解放される。
ちらっと視線を向けてみればくっきりと沖田隊長の歯型が残っていた。最低だこの人。
「荒治療でさァ。」
「余計に悪化させてますよ!」
「そう思うだけで実際治癒してまさァ。」
「してません!!」
もう怒っていいものか、呆れていいものか。
とりあえず混乱した頭では沖田隊長の毒舌には勝てそうもない。
落ち着こうと涙目を手の甲で拭って一度深呼吸をした。
ああ、ズキズキと腕の痛みが増している。
「最低、信じられません。」
「お前がさっさと真撰組を辞めねェからこうなるんでィ。」
「はあ?」
「言ったろィ。後悔させてやるって。」
ぐっと痣がある方の腕を掴まれて、思わず「いっ」と声を漏らして身体に力を入れる。
真剣な表情の沖田隊長に真っ直ぐ見つめられ、思わず息をするのも忘れて唾を飲んだ。
「土方の女め。」
ぐぐぐっと掴む手の力が強まる。
もう痛みの感覚すら麻痺してきて痛いのか何なのかわからなくなってきた。
それでも生理現象で涙は溢れてくる。視界が霞む。
「ち、がいます…!」
「どうだか。」
「ほんっとうに、違う、から…!!」
「…………」
お願いだからその手を放してくれと声には出ないが涙目で訴える。
掴まれている手にもう片方の手を力なく添えて、首を小さく横に振る。
すると、黙っていた沖田隊長がニヤリと笑って、
「ああもう、堪んねェやアンタのその顔。」
腕を掴んだまま私を後ろに押し倒した。
視界に映るのは真っ黒な夜空と、
「殺したいほどゾクゾクするんでさァ。」
ぺろりと舌で唇を舐める沖田隊長の妖艶な微笑み。
ククッと楽しそうに喉で笑ってすぐ耳元でそっと囁く。
「これでも結構アンタのこと気に入ってるんでィ。わかれよ、。」
甘く、冷たく、ゾクゾクするその囁きに思わず身震いをする。
ねぇ、隊長。それってつまり、
アナタは私に夢中なんでしょう?
_____________________________
2009.10.18 執筆
(私もいつかアナタのその横暴さに嵌まっていくのでしょうか。)